科学の教室D 講演会 
 『ワクチンと治療薬の違い
講師:  武長 徹さん(京都大学大学院生命科学研究科・博士後期課程) 
 2017年11月8日(水) 15:50〜16:50 /本校LL教室
 
 京都大学ウイルス・再生医科学研究所で、インフルエンザウイルスやエボラウイルスの研究をされている武長さんに講義をしていただきました。講演会には医療、看護、生物学に関心のある生徒を中心に26名の生徒が参加しました。ワクチン研究の歴史と感染症が予防できる原理、ウイルス増殖のしくみの解明により治療薬を作ることができること、危険な病原体を取り扱う実験施設のBSL(バイオセーフティレベル)についてなど、感染症に関わる様々な事を教えていただきました。研究者による病原体を使った様々な実験を通して病原体の真の姿が分かり、その結果感染症の予防や治療が可能になり、医療に守られた今の社会が成り立っていることがよく分かりました。
 
 
 
 
 感染症を予防するワクチンのお話から講義が始まりました。今年のインフルエンザワクチンの特徴も紹介していただきました。    最初のワクチンは天然痘のワクチン。約200年前にジェンナーが行った牛痘ウイルスの接種から予防接種は始まりました。 
     
 
 ウイルスが人に感染し細胞内で増殖し放出されるメカニズム。それが分かると阻害作用を持つ治療薬を作ることができます。    2014年に西アフリカで流行したエボラ出血熱。病原体、症状、感染拡大を防ぐ取り組み、流行の原因について教えていただきました。
     
 
 
  参加者の感想
 自分の中で興味のある学問や、将来何がしたいかという目標がこれといってまだないけど、ウイルスや細胞に関する知識をもっと深めたいと思った。自分はどっちかというと文系だけど、生物とか、主に人体についてのことを学びたい、またそれに関係する職業に就きたいという意識が強くなった。そもそもインフルエンザなどのウイルスって何から生まれるのか知りたい。1年・女子)

 これまで知らなかった医療の実態の一端が聞けてとても面白かったです。ワクチンと治療薬の違いだけではなくて、話題の病気の内容まで聞けて病気に対する見方が分かりためになりました。国ごとの脅威に対する考え方の違いには考えることがありました。危険をどう捉えるかがこれからの問題点なのだろうと思います。(1年・男子)

  ウイルスの感染を防ぐには、お医者さんや研究者の方々だけでなく、国で防がなければならないので、政治家の方々の協力も必要だという事実にとても驚きました。そして第一次世界大戦の戦死者は500万人ほどでこれでも多いはずなのに、インフルエンザに感染して死亡した人の数の方が多いと聞き、感染症って本当に怖いなと思いました。ワクチンで予防してそれでもかかったら治療薬を病院で頂いて治療して・・・、というようにウイルス感染からいくら身を守っても、また次の病原体が発生し、国境を越えて感染が広がりたくさんの方々が亡くなって・・・。何度も何度も新しい病原体が発生する度に、それに対する研究をしてくださっているのに、また新たなウイルスが発生していくのは仕方のないことかもしれないけど、とても残念な事だと感じました。私も今から将来やりたい仕事を見つけたいと思っているので、積極的に色々な事を知って興味を持ったことを学んでいきたいと思います。1年・女子)

  ウイルスが増殖するために必要なタンパク質を阻害する物質(ウイルス薬)を作ることで対策していると聞いてなるほどと納得できた。一本鎖RNA鎖などのエボラの分類があることを知って、しかも遺伝子が7つくらいしかないと聞いてウイルスの怖さを改めて感じた。(2年・女子)

  国の不安定さもウイルスの流行に関係があると知り驚いた。治療薬を見つけることも大切だが、流行の兆しが現れた時にどのような対策を国が採れるかが大切だと思った。(2年・女子)

  医療が発達してきたのは最近なんだと思いました。日本にいるからすぐに病院に行って治療を受けられるけど、世界的に見れば十分な治療を受けられない所が多いのかなと思いました。理系でなくてもできることがあると言っておられたのでまた考えてみようと思います。まずは手洗いにうがい、自分の身を守って他の人にうつさない事から始めてみます。(2年・女子)

  医療で用いるワクチンと治療薬の違いを教えてもらったが、生物学として研究することで人を助けることができる。医療系に進めば医学で人を助けることができる。文系の経済・政治を学べば国全体のシステムとしても人を助けることができる。経済的に不安定な国にワクチンを推奨しても、お金がないとうたない人がいて結果広まる。このサイクルを改善する方法が実際に出てくることが一番感染症が広まらない対策になると思う。大学でどの学部でどんなことを学ぼうかと悩んでいた一年生の時に聞けば、もっと広い視野で人を助ける職を選べた。(2年・女子)

  ワクチンにはとてつもなく長い歴史があるんだなと思いました。私たちが今、健康に生活できていたり、インフルエンザの予防接種などのワクチンがあるのも、とてもありがたいことだと感じました。それは世界中でワクチンについての研究などが行われているからだと思うので、そういうところで活躍できるのはかっこいいと思いました。また、今習っている生物の学習で出てきた名称が、ちゃんと研究の時に出てきていることを知って、今習っていることは無駄ではない、大事な事なんだと実感できました。(2年・女子)

  ワクチンや治療薬の違いや、エボラが起こった歴史について知ることができ、さらに日本の研究の現状についても知ることができたのですごく自分のためになりました。私は研究により、感染を防ぐことを進めてほしいので、長崎大学に研究所を作ろうとしていることに賛成だと感じました。より一層、もっと研究が進み、一人でも多くの感染者を減らしてもらいたいです。(3年・女子)

  日本にも研究所が必要だと思った。西アフリカの三国のように、エボラが流行し多数死亡してからでは遅いため、国だけでなく国民の協力も必要であると感じました。(3年・女子)

  B4施設の捉え方のついて、国民性の違いが影響しているという事で、いろいろ難しいのだなとわかりました。日本の場合、地震等の自然災害が多いので、仮に作るとしても安全基準の問題など課題が多いように思います。長崎大学のニュースにも注目してみます。(A先生